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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

かくだ版アクティブ・チャイルド・プログラム(2023年度)

スポネットかくだでは、将来ビジョン「元気をつなごう ~スポーツで明るく楽しく健康で活力あるまち(アクティブシティ)を目指して~」実現のために、角田市のスポーツにおけるさまざまな課題を整理。「幼児スポーツ」の課題解決を第1優先とし、幼稚園・保育所等と連携しながら、日本スポーツ協会が開発した、子どもが発達段階に応じて身につけておくことが望ましい動きを習得するプログラム、「アクティブ・チャイルド・プログラム(ACP」のかくだ版を2020年度から実施している。2023度のかくだ版ACP4回目となる。

かくだ版アクティブ・チャイルド・プログラムの主な事業

概要

角田市において、幼児期における身体活動・運動面での課題解決、幼児の生涯にわたる健康的で活動的な生活習慣の形成を目的に、発達段階に応じた適切な身体活動・運動(からだを動かすことや遊び)を提供する講習会・出前講座(「かくだ版アクティブ・チャイルド・プログラム」)を実施する。市内の幼稚園、保育所、認定こども園等(以下、「保育現場」)での開催を予定することから、保育現場に通う幼児(未就学児)が対象となる。保育現場では保育者向けの研修会と出前講座を、乳幼児健診とスポーツ交流館では、乳幼児親子への教室を展開し、身体活動・運動の定着化を図る。

実施主体
角田市教育委員会、株式会社フクシ・エンタープライズ、スポーツネットワークかくだ、笹川スポーツ財団

ターゲット
角田市内の未就学児(05歳児)

■事業内容

事業1:幼稚園、保育所、認定こども園等の場を活用した事業

  • 市内保育現場の教諭・保育士を対象に運動あそびについての研修会を開催
  • 保育現場で実践できる「かくだ版アクティブ・チャイルド・プログラム」運動あそび出前講座(45歳児クラス対象)の実施

対象:市内の保育所・幼稚園等5園 計297

日程:①2023年56月 各園で1回実施(実施種目:運動会に向けたリレーあそび)

②2023年11月~2024年2月 各園で2回実施(実施種目:しっぽとり、メチャビー、ボールを使った運動あそびなど)

事業2:乳幼児健診の場を活用した事業

乳幼児健診の待ち時間を活用した運動あそび講座を実施し、市内の乳幼児親子へ発達段階に応じた適切な運動の情報発信をするとともに、運動体験の場を提供

  • 35か月児健診」「1歳おたんじょう相談」「26か月児歯科検診」 での「運動あそび講座」実施

事業3:子育て支援センター・スポーツ交流館での運動あそび講座開催

希望者が自由に参加できる「アクティブ・チャイルド・プログラム」運動あそび教室の定期開催

日程:すべてのコースが20236月~20243月まで月1回実施

  • 平日コース = 対象:01歳児「赤ちゃんママのヨガ&ストレッチ」/23歳児「ちびっこママのリフレッシュ体操」
  • 土曜日コース = 対象:12歳児「ちびっこ運動あそび」/3歳~未就学児「キッズ運動あそび」

調査概要

■目的

    角田市の幼児期の運動・スポーツに対する以下4つの課題解決に向けて「かくだ版アクティブ・チャイルド・プログラム」に取り組み、阻害要因や促進要因の仮説検証とともに、実施頻度や実施意欲の改善を目的とした。

    1. 昔と比べ運動をしない子、苦手な子が多く小学校以前の幼児期に二極化がみられる
    2. 運動が苦手な子には丁寧な指導が必要で時間をかけて楽しみのある内容が求められる
    3. スポーツに親しむ家庭環境の醸成や、保護者が過度に怪我を恐れる風潮の改善が求められる
    4. 日常の遊びで身体を動かす機会が減少している

    ■調査期間

      202312月~20242

      ■調査対象

        宮城県角田市の保育所・幼稚園に通う46歳の園児とその保護者

        ■標本数

          261組(522人) 有効回収数(率):205組(78.5%)

          ■調査方法

            質問紙調査:調査票の配布は「運動あそび出前講座」に参加した保育所・幼稚園の園児・保護者に直接配布し、回答後保育所等にて回収を行った

            ■担当者:笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所

              鈴木 貴大(政策オフィサー)
              吉田 智彦(シニア政策ディレクター)
              宮本 幸子(政策ディレクター)
              武長 理栄(シニア政策オフィサ

              かくだ版ACP 効果検証と分析結果

              子どもの活動実態とかくだ版ACP継続の効果が確認された

              4回目の実施となる2023年度調査では、前年度を上回る回収率(78.5%)を示し、角田市内の幼児(4、5歳児クラス)の運動・スポーツ習慣や意識、生活習慣、保護者の意識など、より実態に近いデータの収集ができた。4回の調査を通して本事業が子どもの運動・スポーツ・運動あそびの実施や運動・スポーツに対する気持ち、保護者の運動・スポーツに対する意識の改善などに一定の効果をもたらしたことが明らかになった。

              ①子どもの運動・スポーツ実施と気持ちの変化

                • 角田市の4、5歳児は「ぶらんこ」や「おにごっこ」など運動あそび系の実施率が高く、「サッカー」や「野球」などスポーツ系種目の実施率は女子よりも男子のほうが高い傾向を示した。また、主な実施場所は「家の周り」「家の中」「Kスポ」が上位にあがった。 実施頻度は2023年度調査では回数・時間ともに2022年度から増加傾向を示した。
                  (報告書:p.8~10)
                • 運動あそび出前講座受講後の実施意欲や講座への参加希望は4回の調査いずれも高い値を示し、本事業が子どもたちの運動・スポーツ実施に対する気持ちに好影響を与えていることが確認された。
                  (報告書:p.11~13)
                • 出前講座参加後に家族と運動・スポーツをする機会が増加した割合は2021年度以降25%程度で推移しており、出前講座の実施は家族との実施機会の増加に一定の効果があったと推察できる。
                  (報告書:p.14)

              ②かくだ版ACPの効果の確認

                • 運動あそび出前講座参加後の家庭での子どもの変化において「できる動きが増えた」「運動が上手になった」の割合が2020年度調査から増加の傾向を示し、アクティブ・チャイルド・プログラムの実施により期待される効果が確認された。また、保護者の運動・スポーツに対する意識や行動にも変化がみられるなど、保護者への波及効果もあったと考えられる。
                  (報告書:p.1518
                • 運動あそび出前講座の実施により子どもの運動あそびへの意欲が向上し、保護者を誘った割合は2022年度に続き半数を超え、出前講座の実施は子どもが保護者を運動あそびに誘うきっかけになり、子どもを通して運動・スポーツを実施する機会の提供につながったと考えられる
                  (報告書:p.19
                • 2022年度からの追跡調査の結果では、低頻度から高頻度に変化した子どもの割合が2022年度調査よりも多かった
                  (報告書:p.2022

               

              主な調査結果

              ■運動・スポーツ・運動あそび種目

              図表1. 過去1年間に1回以上行った運動・スポーツ・運動あそびの種目

              図表1. 過去1年間に1回以上行った運動・スポーツ・運動あそびの種目

              過去1年間に1回以上行った運動・スポーツ・運動あそびの種目をたずねた。全体、クラス別の合計をみると、「ぶらんこ」「おにごっこ」「自転車あそび」が上位3種目を占めた。
              年長の女子では「なわとび(長なわとびを含む)」が80.8%で同率3位であり、男子よりも34.5ポイント高かった。一方、「サッカー」や「野球」「バスケットボール」などスポーツ系種目の実施率はいずれのクラスにおいても男子が女子を上回る結果となった。
              (報告書:p.8

              ■運動・スポーツ・運動あそびの実施場所

              図表2. 運動・スポーツ・運動あそびを主に行っている場所

              図表2. 運動・スポーツ・運動あそびを主に行っている場所

              運動・スポーツ・運動あそびを主に行っている場所は、全体、各クラスの合計と性別いずれも「家の周り」が最も高かった。「Kスポ」の利用率は全体で64.5%であり、クラス・性別にみると年中女子の75.0%が最も高い。
              (報告書:p.9

              図表3. 主に行っている場所(実施頻度別)

              図表3. 主に行っている場所(実施頻度別)

              注)高頻度:1週間3回以上または11時間以上 低頻度:1週間に2回以下かつ11時間未満

              運動・スポーツ・運動あそびを主に行っている場所を実施頻度別にみると、高頻度、低頻度ともに「家の周り」が最も高く7割を超えた。一方、「家の中」「Kスポ」「台山公園」「市外の公園」は高頻度のほうが割合は高く、実施頻度が高い子どもは多様な場所で運動あそびなどを実施する様子がうかがえる。(報告書:p.9

              ■運動あそび出前講座参加前後の運動回数・時間の変化

              図表4. 講座参加前後の運動回数の変化

              図表4. 講座参加前後の運動回数の変化

              図表5. 講座参加前後の運動時間の変化

              図表5. 講座参加前後の運動時間の変化

              2023年度の運動あそび出前講座参加前後の運動回数・時間の変化をみると、「1週間に7回以上」は参加前後ともに4.3%、図表5の「2時間以上」は参加前後ともに7%台と、出前講座参加前後で運動回数・時間には大きな変化はみられなかった。2020年度からの推移をみると、回数の「まったくしていない」は参加前後ともに2022年度までは10%台であったのに対し、2023年度は10%未満であった。時間は「1時間以上2時間未満」が2020年~2022年度は参加前後ともに2030%台であったのに対し、2023年度は40%を超えた。さらに「30分未満」は減少し、運動回数・時間ともに経年変化では増加の傾向を示した。
              (報告書:p.10

              ■家族との運動・スポーツ(保護者回答)

              図表6. 家族との運動・スポーツ実施状況

              図表6. 家族との運動・スポーツ実施状況

              図表7. 講座参加後の家族との実施状況の変化

              図表7. 講座参加後の家族との実施状況の変化

              2023年度の家族との運動・スポーツ実施状況は「よくしている」17.2%、「時々している」64.2%、「ほとんどしていない」15.7%、「全くしていない」2.9%であった。 「よくしている」「時々している」を合わせた割合は81.4%であり、多くの子どもが保護者と一緒に運動・スポーツを実施している様子が確認できる。また、この割合は2020年度以降増加の傾向を示している。
              講座参加後の家族との運動機会が「増えた」「やや増えた」を合わせた割合は2021年度以降25%程度で推移しており、出前講座の実施は家族と運動・スポーツをする機会の増加に一定の効果をもたらしたと推察できる。
              (報告書:p.14)

              ■子どもが運動・スポーツをすることへの期待(保護者回答)

              図表8. 子どもが運動・スポーツをすることへの期待

              ACP2023_1.jpg

              2023年度の調査では「運動することを楽しむ」81.2%が最も高く、「体力をつける」80.7% 、「達成感を味わう」60.4%が続いた。

              2020年度から4回の調査を行い、いずれの年度においても、子どもが運動・スポーツをすることへの期待は「運動することを楽しむ」 「体力をつける」の2つが他と比べて高い割合を示した。また、2023年度の結果は「運動することを楽しむ」以外の項目で、2022年度より増加し、過去4回の調査の中で、最も高い値を示した項目が多かった。
              (報告書:p.18

              ■かくだペットボトルモデル(スポーツ)

              過去、角田市で、小学生にペットボトルゴミの分別教育を施したところ、親、祖父母も分別を行うようになり、市全体にスムーズに浸透した事例が報告された。これを参考に、家庭内において子どもから「健康のために一緒にスポーツをしよう!」と発信することで、家族全体でスポーツを楽しんでもらうなど、スポーツのイメージの一新に取り組んでいる。

              下記、本調査においてQ7の選択肢1、保護者票Q6の選択肢1または2を選んだ者は、運動あそび出前講座参加後に運動意欲が向上し、保護者を運動あそびに誘っている。子どもから保護者への周知によりペットボトルゴミの分別方法が定着した過去の市内の事例を参考に「かくだペットボトルモデル(スポーツ)」と定義した。

              ①運動への意欲

              Q7. あなたは、運動あそび出前講座に参加して、運動やスポーツ・運動あそびをもっとしたいと思いましたか。

              1. もっとしたい

              2. いまのままでよい

              3. いまよりもへらしたい

              ②保護者への声かけ(保護者票)

              6. 調査をお願いしたお子様が運動あそび出前講座に参加してから、あなたのことを運動や運動あそびに誘うようになりましたか。

              1. 誘う

              2. たまに誘う

              3. あまり誘わない

              4. 誘わない

              図表9. かくだペットボトルモデル(スポーツ)達成率

              ACP2023_1.jpg

              図表9の「もっとしたい×誘う」 を「かくだペットボトルモデル(スポーツ)」の達成者とした。2023年度は全体で53.6%が達成し、2022年度から2.5ポイント増加した。性別にみると男子55.4%、女子52.1%と2022年度から男女ともに微増した。
              運動あそび出前講座の実施は、子ども自身の意欲向上に加え、家庭で保護者を誘って運動あそびに取り組む行動にも影響を与えた可能性が示唆された。
              (報告書:p.19

              主な調査結果(追跡調査)

              2023年度調査では、2022年度の調査に回答した4歳児クラスの子どもが1年後にどのような変化を示したか確認するために、同一人物のデータを追跡できるように調査を設計し、79名が分析対象となった。

              運動あそび出前講座参加前後の運動あそび実施頻度の推移

              図表10. 参加前の実施頻度推移(2021年度⇒2022年度⇒2023

              ACP2023_1.jpg

              注)高:高頻度(1週間3回以上または11時間以上)
                低:低頻度(1週間に2回以下かつ11時間未満)

              2022年度調査と2023年度調査に回答した子どもの運動あそび出前講座参加前の実施頻度の推移をみると、高頻度の維持を示す「高高」は全体37.9%、男子30.8%、女子43.8%であった。実施頻度がこの1年で下がったことを示す「高低」は全体で3.4%と2021年度⇒2022年度の23.9%から大きく減少し、実施頻度が上がったことを示す「低高」は2021年度⇒2022年度の16.4%から2022年度⇒2023年は34.5%に増加した。

              かくだ版ACP事業のまとめ

              2020年度から4年に渡り実施したかくだ版ACP調査につき、これまでの調査結果や保育現場からの報告をもとにACP事業の成果をまとめたい。

              角田市内の45歳児の運動・スポーツ実施状況の実態解明と成長のきっかけ

              かくだ版ACPでは角田市に住む45歳児の8割程度が調査の対象となっており、20212023年度調査の回収率はいずれも約80%と角田市在住の45歳児の実態を示す貴重なデータとなった。4回の調査を通して、角田市の45歳児は運動・スポーツに対してポジティブな感情を持つ傾向が調査結果から確認され、その傾向は運動あそび出前講座を通してさらに高まるなど運動・スポーツ・運動あそびに前向きに取り組んでいる様子がうかがえる保育者からは、参加後には子どもたち自身がルールを考えて遊ぶ機会が増えたり、友達を思いやる場面が増えるなど、子どもの成長を感じられたと声があがった。かくだ版ACPの取り組みは45歳児の運動・スポーツ実施状況の実態解明に加え、子どもが成長するきっかけを提供するプログラムになったといえるだろう。

              保護者や保育者、保育現場への波及効果

              かくだ版ACPの主なターゲットは未就学児であるが、保護者などへの波及効果も認められた。調査結果から保護者自身の運動・スポーツに対する意識や行動にも少ないながらも変化がみられ、子どもを対象としたプログラムだが日常生活の中で関わりが深い保護者にも好影響を与えている。また、出前講座実施に向けた保育者を対象とした研修や出前講座を通して、子どもとの接し方や運動あそびの展開方法など保育者自身が学ぶ機会も多く、日々の保育にも活かせているといった声もあがった。

              データの活用と市外への広がり

              4回の調査を通して、かくだ版ACPの効果検証や小学校へのACP導入に向けた検討など、調査結果を基にして現状の課題解決に向けた議論や今後の施策について検討されてきた。かくだ版ACP調査のデータは、出前講座を実施する保育現場やスポーツ、子育てを所管する行政の部署が事業継続を検討する際や予算措置を講じるための資料として使われるなど、現場や行政内において有効に活用された。
              また、宮城県議会議員による出前講座の視察や、宮城県主催のスポーツイベントにおいてかくだ版ACPの出前講座実施、市外研修会等での取り組みの報告など、かくだ版ACPが評価され宮城県内を中心に広く認知されつつある。本事業を参考に他の自治体でも具体的な取り組みが進められることを期待したい。

              課題解決に向けた取り組みと今後の展開

              角田市内の子どもの詳細な実態把握と具体的な施策の検討

              2023年度調査では過去1年間に行った運動・スポーツ・運動あそび種目や主に実施する場所をたずねた。角田市内の子どもたちが主に行う種目が明らかになったと同時に、スポーツ系種目の実施率が全国データ(子ども・青少年のスポーツライフ・データ2023)よりも高い傾向が確認された(報告書:p.8)。運動・スポーツ・運動あそびの実施について、実施する場所や形態(スポ少や民間クラブなど)、一緒に行う人など、詳細な活動実態を把握することで、角田市の子どもの運動・スポーツに関する課題がさらに明確になり、具体的な施策の検討につなげられるだろう。
              また、主な実施場所を頻度別にみると、低頻度の子どもは高頻度の子どもと比べて「自宅の中」や「Kスポ」「台山公園」の値が低いことから、家の中でも取り組める運動あそびの紹介やKスポ、台山公園などの角田市内でもあそび場が充実した施設に行くきっかけづくりが求められるだろう。その際、子どもだけではなく、保護者自身も楽しめるような取り組みがより効果的であると考えられる。

              家族との実施や保護者への声掛けに一定の効果

              運動あそび出前講座参加後に家族との運動・スポーツ実施の機会が増えた割合は過去3回の調査でいずれも25%程度を示し、出前講座の実施が家庭での実施状況に一定の効果をもたらしていることが明らかになった。子どもから保護者への声掛けが保護者自身の運動・スポーツ実施率向上につながっているかについては引き続き検証が必要になるが、出前講座の実施は子どもたちに限らず保護者に対しても何らかの好影響を与えている可能性が示唆された。

              事業継続に向けた体制構築

              2023年度で4回目を迎え、今回から出前講座の講師が変わるなど体制に変更があったものの、実施主体による講師の確保、保育現場や保護者の理解があり事業は継続できた。事業継続に向けて実施主体は質の高い講師の派遣に加え、保育者向けの研修内容の充実化や出前講座の展開方法などを現場で積極的に共有するなど、保育現場との連携を強化しながら普段の保育の中でかくだ版ACPが展開できる体制構築に向けた検討が重要になるだろう。

              追跡調査からみえた課題

              2021年度調査から個人を追跡できるよう調査を設計し、2022年度、2023年度で実施頻度や運動・スポーツについて感じることの変化を明らかにした。2022年度調査では実施頻度が高頻度から低頻度に変化した子どもが全体で20%強いたものの、2023年度は5%未満にまで減少した。一方で運動・スポーツに対する感情はポジティブからネガティブに変化した子どもが2023年度は全体で20%程度おり、男子が9.7%、女子が31.7%と男女差がみられ、その差は2022年度よりも広がった。
              2022年度調査では実施頻度の変化に男女差がみられ、2023年度は運動・スポーツに対する感情の男女差が明らかになった。今後は運動・スポーツ実施の実態や運動・スポーツに対する感情について、性別や年齢別など丁寧に把握することで、課題をより明確にできる可能性が示唆された。1年間の追跡では得られるデータに限界はあるものの、単年度調査の経年変化ではみられなかった差を確認できるなど、追跡調査に取り組んだ意義はあった。今後はかくだ版ACPを経験した子どもの就学後の運動・スポーツ習慣や生活習慣を調査し、長期的な視点での実態把握が重要になるだろう。